東京(2014年7月1日) – 化粧品の動物実験を終わらせるため、中国がさらに一歩前進した。6月30日から、中国国内で製造販売される一般化粧品の動物実験が必要要件ではなくなる。この歴史的な規制改正の裏には、ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI)の北京チームと中国の国内動物関連のパートナー団体が実施しているBe Cruelty-Freeチャイナによる二年間の取り組みがあった。
中国の大連では、Be Cruelty-Freeチャイナのキャンペーン関係者が、大きな横断幕と100体の実物大のウサギの切りぬきを並べた大々的な路上イベントで規制改正を祝った。一方北京では、21世紀の安全性試験に向けた中国の動きにおいて転機となる事柄として、化粧品の動物実験の法的要件の緩和を称賛した手紙が、HSIと20以上の国内の動物保護団体により署名され、中国食品薬品監督管理局に送付された。
香港では、Be Cruelty-Freeの企業パートナーであるラッシュが店頭イベントとウサギのフラッシュ・モブで規制改正を祝った
HSIの中国政策担当者のピーター・リー博士は次のように述べている。「残酷で信頼性の低い化粧品の動物実験を中国で終わらせるための重要な第一歩です。Be Cruelty-Freeはこの重要な規制改正を達成するために全力で取り組んできました。しかし、中国における全ての化粧品の動物実験を終わらせるためにはまだまだやるべきことがたくさんあるので、これで満足するわけにはいきません。この規制改正は、中国が、cruelty-freeな(動物に苦痛を与えない)化粧品に流れる世界的動向を認識したことを示します。これは大変重要なことです。」
毎年、中国では10万~30万匹のウサギ、モルモット、マウス等の動物が化粧品の動物実験に使われていると推測されている。規制改正の対象となる全ての企業がこれを活用すれば、中国国内で毎年1万頭の動物の命を救うことができると推測される。化粧品の動物実験では、動物の毛を剃った皮膚に化学物質を塗りこんだり、動物の目に化学物質を点眼したり、動物に致死量に至るほどの化学物質を強制的に経口投与したりする。これらの試験は動物に苦痛を与えるだけではない。このような試験の多くは、人間における化学物質の反応を予測するには信頼性が低いとされている。
リーによると、HSIのキャンペーンの次の段階は、規制の改正が海外から輸入された化粧品に適用されるよう、そして市販後に、化粧品が無作為に選ばれ追加の試験が実施される際の動物実験を終わらせることができるように働きかけることである。
リーは次のように述べている。「多くのcruelty-freeな企業が中国に進出したがっていることを把握しているが、これらの企業には、中国の状況について注意を喚起する必要があります。これから中国が市販後の監視のための試験を増加させることは確実で、そのためこれらの市販後の試験において、自社の製品がウサギの目に点眼されたり、マウスに強制経口投与されるリスクがあります。これらの動物の苦痛を全て終わらせることができるよう、決意を持って取り組んでおります。今回の規制改正は正しい方向への第一歩ですが、まだまだ達成すべきことがあります。」
世界的にcruelty-free な化粧品の製造販売を行う、Be Cruelty-Freeの企業サポーターのラッシュは、会社のエシカル・ポリシーに反するという理由から、中国で製品を販売していない。
ラッシュのエシカル・ディレクターのヒラリー・ジョーンズは次のように述べている。「ラッシュは、中国の規制当局が実施した国内で製造された製品に関する試験要件の改正について、とても喜ばしいことだと思っています。これが、動物実験を法的要件から取り除く法令への第一歩であることを祈ります。今回の改正では、動物を使った試験が全く実施されていない製品を市場に出すことができないため、現時点では、ラッシュやその他のcruelty-freeな企業は、未だに中国に進出することができない状態にあります。中国の化粧品企業がヨーロッパに進出することができ、我々がcruelty-freeな状態を保ったまま中国に進出でき、そして中国がヨーロッパと肩を並べることができるような、さらなる革新的な法令を待ち望んでいます。」
6月30日以降、中国における化粧品の動物実験は次のように変わる:
- 海外から輸入された一般化粧品 – 動物実験が変わらず必要となる
- 国内で製造された一般化粧品* – 動物実験は法的要件ではなくなる
- 特殊用途化粧品**(海外から輸入されたもの及び国内で製造されたもの両方)— 動物実験が変わらず必要となる
- 海外輸出のみの目的で、国内で製造された一般化粧品 – 今まで通り、動物実験は必要とされない
- 海外の電子商取引のウェブサイトでの購入により中国に入ってきた化粧品 – 今まで通り、動物実験は必要とされない
*「一般化粧品」は、メイクアップ、香水、スキンケア、ヘアケアやネイルケア用品を含む
** 「特殊用途化粧品」は、毛髪染剤、制汗剤、日焼け止め、美白クリーム及び効果効能を謳うその他の製品を含む
HSIは、動物実験より、より優れた動物を用いない試験へのアクセスを改善するために、中国の規制当局に、引き続き働きかけていく。5月には、ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル、The Humane Society of the United States及びHuman Toxicology Project Consortiumからの8万ドルの助成金により、インビトロ・サイエンス研究所による、中国の科学者を対象とした、動物の代わりにインビトロの方法を用いた試験を化粧品の試験に活用するための、実践トレーニングが提供された。インビトロや動物を用いないその他の試験法が中国に導入され始めたのはごく最近のことであり、中国の科学者にとって、これらの試験法へのアクセスは限られている。
Be Cruelty-Free は、化粧品の動物実験を終わらせるための世界最大規模のキャンペーンであり、オーストラリア、ブラジル、カナダ、インド、日本、韓国、ニュージーランド、ロシア、台湾及びアメリカでの取り組みをリードしている。ポール・マッカートニー、リッキー・ジャーヴェイス、メラニー・チズム及びレオナ・ルイスを含む有名人もキャンペーンを支援している。中国の映画女優の朱珠は、Be Cruelty-Free チャイナの親善大使を務めている。
中国の化粧品に関するよくある質問についてはこちら(英語のみ)。
以上
問い合わせ:
HSI (Be Cruelty-Free チャイナ): Irene Zhang, irenezy0910@gmail.com
HSI (Be Cruelty-Free ジャパン): 東さちこ, 070-5584-9546, sazuma@hsi.org (日本語対応のみ)
山﨑佐季子, syamazaki@hsi.org
HSI (イギリス): Wendy Higgins, +44 (0)7989 972 423, whiggins@hsi.org
注釈
Be Cruelty-Free チャイナの写真提供についてはお問い合わせください。
ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI) 及びそのパートナー団体は、世界最大級の動物保護団体です。HSI は20年近くにわたり、科学、アドボカシ―、教育及び実践プログラムを通して全ての動物の保護に取り組んできました。「世界中の動物に畏敬の念を示し、動物虐待に立ち向かう」ウェブサイト― hsi.org/becrueltyfree