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最新の動物を用いない試験方法への世界的な移行において、中国が主導的な役割を担う可能性をHSIが指摘

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  • 会議での発表者の様子。HSI

毒性学における21世紀の動物を用いない代替法について協議するために、中国西安において、500名以上の毒性学、環境科学、薬理学及び化粧品関連の科学者が世界中から集まった。会議はヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(HSI)及びユニリーバ―、ロレアルやシェル等の企業の資金援助により実現し、中国毒理学会の毒性試験代替法及びトランスレーショナル・トキシコロジー委員会及び中国環境変異原学会の毒性試験及び代替法委員会により主催された。HSIは、有害転帰経路(AOP)を普及し、研究や試験において動物を使用しない方法への代替を推し進めるために世界各国の関係者と取り組みを進めている。

中国は現在複数のセクターにおいて規制要件が見直されており、科学者らにとっては、科学が提供しうる最新のヒト生物学を基盤とした技術を反映したものに試験要件を現代化する絶好の機会となる。経済協力開発機構(OECD)により評価された最新のインビトロの試験方法は未だに幾つかの中国の省庁に受け入れられておらず、この状況は、未だに中国の規制の枠組みにおいては必ずしも人間への影響を適切に評価できない方法が主流であることを意味する。世界中で起こっている毒性試験の革命を受けて、代替法の受け入れは加速することが予想される。質的なエンドポイントに焦点を当てた、スループットが低く、費用や時間もかかる従来の動物実験を基盤とした(インビボの)毒性学のパラダイムから、機械的かつ量的なパラメーターとロボットによる高スループットのスクリーニングを用いた、AOP(有害性転帰経路)を基盤としたインビトロの毒性経路アッセイへの移行が進んでいる。

HSIの研究毒性学部門のディレクターのトロイ・サイドルは次のように述べている。「生命科学技術の急速な発展は、毒性学における代替法やトランスレーショナル・トキシコロジーにおいて、研究の結果の向上につながるだけではなく、実践や倫理面でもプラスになるような大きな進歩につながりました。これらの最先端の技術は、化学物質、医薬品や化粧品等の安全性評価に活用される機会が増えています。中国も他の革新的な経済圏に加わり、最新の動物を用いない試験へのパラダイム転換に貢献できる位置にあり、中国において将来このような科学的イベントが数多く開催され、中国における代替法の受け入れが促進されることを願っています。」 

会議の出席者は、21世紀の毒性学試験に関する現状や戦略、AOPの枠組みとリスク評価、毒性学における代替法の開発と活用や、トランスレーショナル・トキシコロジー等、様々な課題に関するワークショップに出席した。中国、アメリカ、欧州連合、イギリス及びOECDの専門家らが51件の報告を発表し、国際的な学術のやり取りのための理想の場となり、また科学者、業界関係者や行政関係者の間で、これらの課題に対する議論を深める機会となった。

TT21/AOP 中国におけるロードマップ」という特別シンポジウムも開催され、現存する代替法やAOPのパラダイムの中国規制当局の受け入れの加速の必要性について議論した。シンポジウムには100名以上の参加者が出席し、全身毒性に対する動物を使わないアプローチについて協議され、中国のAOPロードマップを開発することに焦点を当てたTT21C/AOPのワーキングチームの発足に至った。 

HSIの中国規制関連アドバイザーのTina Quは次のように述べている。「この会議は中国の毒性学に対するアプローチにおいて画期的な出来事で、代替法やトランスレーショナル・トキシコロジーの開発や活用のために中国国内と世界的な取り組みの橋渡しとなりました。試験方法の開発や受け入れの促進のための国際協力の機会に伴い、将来中国がこの分野において主導的な役割を担うことを期待しています。従来の動物を用いた研究から離れる科学的及び倫理的な背景が中国でも受け入れられつつある中、中国の21世紀科学までの道のりをお手伝いできることを楽しみにしております。」  
 
問い合わせ: Wendy Higgins, whiggins@hsi.org +44 (0)7989 972 423

 

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Q: どのような化学物質が動物実験の対象となる可能性があるの?

A: 世界中で推定10万の化学物質が市場に出回っており、毎年何百もの新規の化学物質が導入されています。その多くがプラスチックやそれに関連したポリマーで、その他割合としては少ないですが、洗浄剤、ペンキ、接着剤、潤滑剤、工業用溶剤及び様々な「中間物」と呼ばれる一時的な副産物等が含まれます。密閉された状態で取り扱われ環境に放出されない化学物質もある一方、大量に市場に出回ったり、人や環境への暴露があるような製品の原料として使われるものもあります(例: 化粧品、家庭用洗剤、プラスチックの包装やガソリン等)。

Q: 世界各国において、化学物質はどのように規制されているの?

A: ほとんどの先進国では、化学物質の試験や市場への導入に関する法令が施行されています。例として、カナダの環境保護法、欧州連合(EU)の化学物質の登録、評価、認可及び制限に関する規則(REACH規則)や、アメリカの有害物質規制法等が挙げられます。このような法令や規制はそれぞれ大きく異なるため、各国の取り組み間で調整し、重複を避け、資源を共有することを目的とした様々な多国間の協力体制が確立されるに至っています。

Q: 化学物質にはどのような動物実験が実施されているの?

A: 国際的に合意が形成されている化学物質の「スクリーニング情報のデータセット」には、げっ歯類や魚類の急性毒性試験、28日間の反復投与毒性試験、遺伝毒性試験や生殖発生毒性試験が含まれます。これらの試験は、一つの化学物質につき、合計800匹もの動物を使います。欧州連合(EU)REACH規則は、10トン以上の量で生産されている全ての化学物質についてこれらの試験を義務付けており、最も大量生産される化学物質については、これらの試験に加えて出生異常を調べる試験、生殖毒性試験、発がん性試験や野生動物に対する毒性を調べるための試験等、さらに長期間に及び、動物をより多く用いる試験も義務付けています。

アメリカでは、政府の解釈で最大40もの動物実験が求められる(化学物質一つにつき最大合計12,000匹の動物を使用)、現在農薬部門で適用されている法律上の安全基準の再現を提案した連邦法案が、20104月に2つ提出されました。現在商業用途で使われている推定8万の化学物質にこのような法外な試験のアプローチを求めてしまうと、類を見ない程の数の動物たちが、安全性試験のために研究所で毒物により苦しめられ殺されることになってしまいます。

Q: 試験に使われる動物に鎮痛処置や、その他の保護的な処置は行われるの?

A: 鎮痛処置は通常行われません。加えて、国によっては、研究所で繁殖したラット、マウス及び非哺乳類は実験に用いられる動物の基準を定める国レベルの法律の対象に含まれていなかったり、このような法律のもと保護されていなかったりする場合もあります(アメリカ等)。実験動物の飼養管理や利用方法を定めた法令を持たない発展途上国においては、状況はさらにひどいと言えます。

Q: 動物福祉以外に、動物実験に反対する理由はあるの?

A: 幾つか懸念される点があります。まず、ほとんどの動物を用いた試験は、ヒトへの影響を適切に予測できるかどうか評価されておらず、その結果、実世界におけるヒトへの被害を過剰評価もしくは過大評価しすぎてしまう可能性があります。例えば、ラットを使った試験でもウサギを使った試験でも、ポリ塩化ビニフェルや、工業用溶液、その他多くの医薬品における出生異常を引き起こす特性を検知できませんでした。さらに、ラットやマウスを用いた発がんの試験では、アスベスト、ベンゼン、タバコの煙やその他様々な物質の危険を感知することができず、場合によっては消費者や作業従事者の保護に関する施策が何十年も遅れました。

また、動物実験は非効率的で、多大な時間や資源がかかります。例えば、通常のラットやマウスを用いた試験で、農薬において使われる化学物質一つの発がん性を評価する場合、最大5年、800匹の動物と400万ドルがかかります。現代のロボット技術を用いた200もの異なる細胞試験を活用すると、同じ金額で、動物を使わず、最大350の化学物質を1週間以内で評価できます。すでに活用されている既存の化学物質で評価されていないものや、新規の化学物質に対応するために、規制当局関係者は信頼性のある毒性の情報に、必要に応じて素早くアクセスする必要があり、動物実験ではこのような対応は難しいと言えます。

 

Q: 実際に使える動物実験の代替法にはどのようなものがあるの?

A: 動物を代替したり、使用する動物の数を減らしたり、動物の苦痛を軽減する試験法や試験戦略は20以上、欧州代替法評価センターや世界各国の同様の代替法評価センターにより科学的に評価されたと認められています。加えて、柔軟性のない一連の動物実験の一覧をこなしていくような「チェック・ボックス」形式から、不必要な試験を回避できるような柔軟性のある試験の戦略に移行することでも、使われる動物の数を劇的に減らすことができると考えられます。

Q: 化学物質の試験から動物を救うため、HSIはどのような取り組みをしているの?

A: 動物実験の代替法が開発され、その方法が実際に研究所において動物実験を置きかえるべく活用されるまでには、何カ月、場合によっては何年もの遅れが生じることが多々あります。HSIの科学及び政策の専門家は、短い時間で化学物質の試験に使われる動物の数を削減し、試験そのものを代替できるように、世界中の化学物質の規制当局に対し、この遅れを解消するように働きかけています。2009年には、6,000もの化学物質が重複する動物実験を避けられる可能性のあるREACH規則の不明瞭な点を明確にするように欧州化学機関に働きかけ、400万匹以上の動物たちを救うことにつながりました。また、新たな法令が確かな動物福祉の理念を反映することを保証するために、アメリカの有害物質規制法の改正にかかわる政治的討論にも積極的に参加しています。しかし、このようなアプローチは、永遠に動物実験を終わらせるという我々の最終目標の第一段階であるに過ぎません。この目的を達成するために、超高速の細胞試験や高度なコンピューターモデルを組み合わせた毒性試験の「21世紀」アプローチという全く新しいアプローチを支援し、推し進めるために、大学所属の科学者、一般企業や世界中の政府機関と、類を見ないパートナーシップを構築しました。動物実験の場合、結果を出すために何カ月、もしくは何年もかかる場合もありますが、この新しいアプローチの場合、数時間で結果が出るようになります。

Q: どのようにこれらの取り組みを支援できるの?

A: 実験動物を助けるめには、こちらをご覧ください(英文のみ)。また、こちらから、世界中の動物実験を終わらせるためのHSIの取り組みをご支援ください。

 

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経済協力開発機構における国際動物保護委員会(International Council on Animal Protection in OECD, ICAPO)と医薬品プログラムにおける国際動物保護委員会(International Council on Animal Protection in Pharmaceutical Programmes, ICAPP)は、ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI)を含む動物保護団体が、経済協力開発機構(Organization for Economic Cooperation and Development, OECD)医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonization, ICH)動物用医薬品の承認審査資料の調和に関する国際協力会議(Veterinary International Cooperation on Harmonization, VICH)のもと、一同に会する世界各地域の化学物質や医薬品の規制当局と交流をもつための統括組織である。

OECDは、化学物質の試験、表示方法及び規制を含む様々な分野において国際的整合性を促進するための34カ国間の経済協力体制である。ICHVICHは、人間や動物のための医薬品の安全性、効果や品質を保証するために、試験の要件やアプローチの国際的な整合化を進めるために、世界の三つの主要な医薬品市場であるヨーロッパ、日本及びアメリカの政府規制当局や業界団体を引き合わせ、三か国間で対話をするための組織である。

この三つの組織全てが、未だに非人道的で時代遅れの動物を用いる方法に頼った、影響力が強いテストガイドラインを発行し続けている。ICAPOICAPPPを通して、HSIは、人間や環境に対する化学物質や製品の危険をより適切に評価でき、かつより人道的で高度な試験ツールや戦略を促進し、動物実験を代替し、削減し、動物の苦痛を軽減するよう働きかけている。

詳しくはこちらから(英文):icapo.org.

世界中で動物実験を終わらせるためのHSIのキャンペーンをご支援ください。

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Q: どのような種類の製品が農薬に分類されるの?

A: 農薬は、「有害生物」とみなす生物を防除、殺害、忌避もしくは抑制することを意図して用いられる物質もしくは物質の混合物です。一般的な例には除草剤、防虫剤、殺虫剤、猫いらず(殺鼠剤)、殺鳥剤、燻蒸剤(抗線虫剤)等があり、「殺菌作用」のある石鹸剤や洗浄剤(抗菌剤)等も含まれます。国によっては、食用作物への使用を意図したもの(作物保護製品)と農業が主要な用途ではないもの(殺生物剤)は区別されています。
※注:日本の法律では、農作物に対して使うものを農薬としています。

Q: 農薬の毒性試験において動物はどのように使われているの?

A: ほとんどの先進国の規制においては、全ての農薬や殺生物剤とその原料に個別に毒性試験を実施することが義務付けられており、必要となる試験として20種類以上の動物実験が挙げられています。試験の例としては、皮膚刺激性試験や眼刺激性試験、化学物質中毒になった動物とその子孫の行動学的研究や、死に至る用量を評価するために、動物に大量の被検物質を強制的に飲み込ませたり吸引させたりする、批判の多い急性毒性試験等が挙げられます。試験にはげっ歯類、ウサギ、鳥類、魚類、そしてイヌまでもが使われており、試験によっては一回につき何百匹もしくは何千匹もの動物が使われます。農薬に使われる化学物質一つのための毒性試験につき、最大12,000匹の動物が犠牲になります。

Q: 試験に使われる動物に鎮痛処置をしたりその他の保護的な処置は行われるの?

A: 鎮痛処置は通常行われません。加えて、国によっては、研究所で繁殖したラットやマウス及び非哺乳類は実験に用いられる動物の基準を定める国レベルの法律に含まれていなかったり、このような法律のもと保護されていなかったりする場合もあります(アメリカ等)。実験動物の飼養管理や利用方法を定めた法令を持たない発展途上国においては、状況はさらにひどいと言えます。

Q: 動物福祉以外に、動物実験に反対する理由はあるの?

A: 幾つか懸念される点があります。まず、ほとんどの動物を用いた試験は、ヒトへの影響を適切に予測できるかどうか評価されておらず、その結果、実世界におけるヒトへの被害を過剰評価もしくは過大評価しすぎてしまう可能性があります。例えば、ラットを使った試験でもウサギを使った試験でも、ポリ塩化ビニフェルや、工業用溶液、その他多くの医薬品における出生異常を引き起こす特性を検知できませんでした。さらに、ラットやマウスを用いたがんの試験では、アスベスト、ベンゼン、タバコの煙やその他様々な物質の危険を感知することができず、場合によっては消費者や作業従事者の保護に関する施策が何十年も遅れました。

また、動物実験は非効率的で、多大な時間や資源がかかります。例えば、通常のラットやマウスを用いた試験で、農薬において使われる化学物質一つの発がん性を評価する場合、最大5年、800匹の動物と400万ドルがかかります。現代のロボット技術を用いた200もの異なる細胞試験を活用すると、同じ金額で、動物を使わず、最大350の化学物質を1週間以内で評価できます。さらに、このようにして得た結果のほうが、動物を用いるより、より適切にヒトに対する影響を評価できます。

Q: 実際に使える動物実験の代替法にはどのようなものがあるの?

A: 20以上の、動物を代替したり、使用する動物の数を減らしたり、動物の苦痛を軽減する試験法や試験戦略が、欧州代替法評価センターや世界各国の同様の代替法評価センターにより科学的に評価されたと認められています。加えて、農薬の試験については、同じ試験を二種類以上の動物で繰り返す等、重複している試験要件を廃止するだけでも使われる動物の数を大幅に削減することができます。例えば、ラットとマウス両方の発がん性試験、ラットとウサギ両方の生殖毒性試験、ラットとイヌ両方の90日間の反復投与毒性試験や、最大3つの暴露経路(強制経口投与、強制吸入、動物の皮膚への塗布)を求める特定の試験等、重複する試験の要件を廃止するだけで、使われる動物の数を大幅に減らすことができます。柔軟性のない一連の動物実験の一覧をこなしていくような「チェック・ボックス」形式から、不必要な試験を回避できるような柔軟性のある試験の戦略に移行することでも改善されると考えられます。

Q: 農薬の試験から動物を救うため、HSIはどのような取り組みをしているの?

A: 動物実験の代替法が開発され、その方法が実際に研究所において動物実験を置きかえるべく活用されるまでには、何カ月、場合によっては何年もの遅れが生じることが多々あります。HSIの科学及び政策の専門家は、短い時間で農薬の試験に使われる動物の数を削減し、試験そのものを代替できるように、世界中の農薬や殺生物剤の規制当局にこの遅れを解消するように働きかけています。しかし、このようなアプローチは、永遠に動物実験を終わらせるという我々の最終目標の第一段階であるに過ぎません。この目的を達成するために、超高速の細胞試験や高度なコンピューターモデルを組み合わせた毒性試験の「21世紀」アプローチという全く新しいアプローチを支援し、推し進めるために、大学所属の科学者、一般企業や世界中の政府機関と類を見ないパートナーシップを構築しました。動物実験の場合、結果を出すために何カ月、もしくは何年もかかる場合もありますが、この新しいアプローチの場合、数時間で結果が出るようになります。

Q: どのようにこれらの取り組みを支援できるの?

A: オーガニックな農産物を購入し、多くの場合、農薬やその他の残留物に汚染されている肉、乳製品やその他の動物性食品を避けることにより、農薬に対する暴露を減らすことができます。安全でかつ効果的なガーデニング用品として、農薬の代替となる環境や動物に優しく、毒性のない方法もあります。さらに、「殺菌作用」があるとうたわれている製品は、農薬(殺生物剤)とみなされ、石鹸剤や洗浄剤製品等、同じような製品で抗菌性がうたわれていないものと比べて、より多くの動物実験の要件がある可能性があります。Cruelty-freeな(動物実験をしていない)製品は、LeapingBunny.orgから探すことができます。

 

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1世紀に渡り、医薬品や化学物質の安全性評価はげっ歯類、ウサギ、イヌやその他の動物を用いた試験に基づいてきました。動物実験は、動物にとって多大な苦痛を伴うだけではなく、時間と資源がかかり、試験が実施できる化学物質の数も限られており、ヒトの体内で化学物質がどのように作用するかに関する理解にもつながりにくく、多くの場合、実生活における人間への影響を適切に予測することができません。

 

現在の薬剤損耗率では、動物実験において安全・効果的と評価された医薬品の9割は、人間において安全ではないか、効果がないことが判明しています。人間の健康に関するニーズに効果的に対応できない上に、莫大な額の貴重な健康関連の予算と何百万匹もの動物の命を無駄にする行為です。人間以外の動物において、実験室で人工的にヒトの疾患を「モデリング」することを目的とした研究の妥当性は、科学者により疑問視され始めています。

 

「動物を用いた研究で化学物質に毒性がないことが示されても、その化学物質の安全性は保証できない。」

アメリカ国家毒性プログラム バーバラ・シェーン博士 [1]

「人間を対象とした臨床試験の前の段階で治療法の候補を評価するために使われている現存する動物モデルは、多くの病状において限定的な予測力しかない。」

アメリカ食品医薬品局 [2]

「問題は、[動物実験の]結果が本当に意味するところがわからないということである。」

アメリカ国立環境衛生科学研究所 ロバート・マロンポット博士[3]

「正確かつ再現性をもってLD50を測定できたとしても、実験動物から得た結果をヒトに当てはめることは非常に難しいため、正確な測定値に関する知識は実用上ほとんど重要性を持たない。」

ドイツ バイエル D. ロルケ博士 [4]

「規制当局は人間の癌のリスクを予測するために動物実験を用いることを選択した。この目的を達成するために、動物実験から得たデータは、ヒトとその他の動物の生物学上の差異、暴露や統計の違い等を克服するため、あらかじめ考えられた仮定により精査されているが、これらの差異は実際には克服し難い。」

– G.B. ゴリ博士 [5]

「現在の技術水準では、動物実験から人間に対するリスクについて量的な評価をすることの科学的メリットは少ない。」

統計学者 デイビッド・フリードマン博士、ハンス・ザイセル博士[6]

「鉛、水銀やポリ塩化ビフェニルに関する動物を用いた研究は、それぞれ、ヒトに影響を及ぼす暴露レベルを1/100から1/100,000過小評価した。遺伝子的に類似した動物を用いて統制された実験室内の条件で実施された毒性学試験に大きく頼っている規制上の判断は、ヒトの脳の能力や複雑さと、遺伝子や環境の重要な相互作用に対して及ぼす危険性を反映できないままでいるであろう。」

社会的責任を果たすための医師団 [7]

「日常的に行われている動物実験に使われている100万、200万、300万ドルは、標準設定という観点からはほぼ無意味と言える世界中全ての動物を用いても、現在のやみくもな方法では全ての新規の化学物質に対応し、人間の健康被害に関して信頼できる結論に至ることは不可能である。我々は手詰まり状態にあるのである。この手詰まり状態は科学に深く根付いたもので、対応が求められる。」

ノーベル賞受賞者 ジョシュア・レーダーバーグ [8]


 1 Shane BS. Human reproductive hazards. Environmental Science and Technology 30, 1193 (1989). 

 2 FDA [Food & Drug Administration]. Challenge and Opportunity on the Critical Path to New Medical Products. Bethesda, MD: FDA (2004). 

 3 Maronpot R, cited in Brinkley J. Many say lab-animal tests fail to measure human risk. The New York Times, A-1 (23 May 1993). 

 4 Lorke D. A new approach to practical acute toxicity testing. Archives of Toxicology 54, 275-87 (1983). 

 5 Gori GB. The costly illusion of regulating unknowable risks. Regulatory Toxicology and Pharmacology 34, 205-12 (2001). 

 6 Freedman DA & Zeisel H. From mouse-to-man: the quantitative assessment of cancer risks. Statistical Science 3, 3-56 (1988).

 7 Physicians for Social Responsibility. In Harms Way: Toxic Threats to Child Development. Boston: PSR (2000). 

 8 Lederberg J. A challenge for toxicologists. Chemical Engineering News 1, 5 (1981).

 

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  • istock

ウサギは、世界中で化粧品の動物実験の代名詞となっており、動物実験をしていない化粧品を示す表示で最も使われているイメージです。ウサギは、モルモット、ラットやマウス等と共に、未だに消費者製品の眼や皮膚の試験に幅広く使われており、化粧品産業のために計り知れない苦痛を強いられています。

研究施設での飼養管理

研究施設での生活を強いられている多くの動物たちと同じように、動物実験で使われるウサギは自然の行動を表現できる機会を与えられていません。野生のウサギは、巣穴に大規模な集団で生活しています。ウサギはシャイで敏感な動物であり、日中はほとんど地中の暗がりで休んでおり、夜に食べ物を探すために活動します。元々夜行性の動物であるため、ウサギは光に敏感です。さらに、ウサギは鋭い聴覚を有しており、これにより捕食動物を察知します。

研究施設での生活環境は、自然の環境からはかけ離れたものです。多くの場合、研究施設のウサギは、何もないケージで各個体が隔離された状態で飼育されており、十分なスペースや環境エンリッチメントが与えられないまま、寂しく退屈な生活を強いられています。さらに、逃れられないまぶしい人工的な照明や、金属製のケージがぶつかり合う音やラジオからの大音量の音楽等の絶え間ない音等、ウサギの五感には常に過剰な付加がかかっている状態です。これら全ての要因は、敏感な動物であるウサギにストレスを与え、ストレスのため免疫が低下し、病気に感染しやすい状態を作り出します。また、金属のケージで生活するため、足に痛みや損傷が起き、これらのストレスに対処しようと自傷行為に至る場合もあります。

ウサギを使った試験

長年にわたり、ウサギは眼や皮膚のドレイズ試験において最も頻繁に使われています。これらの試験は1940年代に開発され、ウサギの眼に化学物質を点眼したり、毛を剃ったり擦りむいた皮膚に化学物質を塗布できるように、ウサギを全身の拘束具で押さえつけた状態で行われます。拘束具(固定器)を付けることにより、化学物質が及ぼす不快感を軽減しようと動物が眼や背中を触り、実験が阻害されることを防ぎます。ドレイズ試験は眼や皮膚への刺激や腐食を評価するために実施されますが、信頼性が低く、ばらつきの大きい結果が出ることで有名です。また、目の発赤、腫れ、潰瘍、さらには失明や、皮膚のひび割れや出血等を引き起こし、とても不快で苦痛を伴う試験です。

何故ウサギか?

ウサギを使う背景に、科学的理由はほぼありません。ウサギを使う背景には、小さく温厚で扱いやすい動物であり、基本的な基準を満たすだけであれば飼養管理が低コストであり、繁殖のスピードが速く、迅速に新たな実験動物を生産することができる等の、実用性に関する理由がほとんどです。また、ウサギには涙管がなく、人間と異なり、涙により眼から有害物質を流し出すことができません。このような理由から、ドレイズ試験でウサギを用いることにより、より多くの化学物質への長期間の暴露が可能になります。これが、ウサギがこの試験によく使われる主な理由の一つです。

代替法

ヒトの皮膚と同等の試験ができるEpiDerm™やEpiSkin™等を用いた方法が、有効であると科学的に評価されおり、皮膚の腐食や刺激に関する動物実験を完全に代替できるとされ、受け入れられています。さらに、SkinEthicという、皮膚刺激性試験において動物を代替できる方法も承認されています。また、牛摘出角膜を用いた眼刺激性試験代替法(BCOP法)やニワトリ摘出眼球を用いた眼刺激性試験法(ICE法)も評価され、眼刺激性試験において生きた動物を代替する方法として受け入れられています。細胞ベースのフルオレセイン漏出試験法もウサギの試験を完全に代替することはできませんが、眼刺激性試験に使われる動物を大幅に削減できるような段階的戦略の一部として使えます。またつい最近、日本の科学者らがヒトの角膜の細胞を使ったインビトロの眼刺激性試験の新たな方法を開発し、この方法も今後代替する際の新たな選択肢として期待されています。

これらのすでに活用できる代替法に加えて、動物実験の廃止を宣言した会社は、新たな試験データが必要な新規原料を回避することにより動物実験を避けることができます。このような、長い間安全に使用されている実績があり、新たな試験を全く必要としない原料は、何千も存在します。

リーピング・バニー

リーピング・バニーの基準は、カットオフ期限後に完成品、原料及び調合に対して動物実験を実施したり委託したりしないこと、またカットオフ期限後に動物実験が実施された新たな原料を購入しないことを企業に誓約させ、製品とその原料が動物実験されていないことを保証するものです。化粧品を購入する際は、ぜひ製品のラベルやインターネットのウェブページにおいてリーピング・バニーのマークが表示されているものをご購入ください。

また、ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルでも、日本で購入できる動物実験をしていない化粧品ブランドのショッピング・ガイドを公表しています。

Be Cruelty-Free

化粧品業界では多くのウサギが犠牲になっており、世界中で化粧品の動物実験を終わらせるための我々のグローバルなキャンペーンである”Be Cruelty-Free思いやりのある美しさキャンペーン”のイメージにウサギを選んだことは、少しも不思議なことではありません。Be Cruelty-Freeキャンペーンは、世界中で、ウサギやマウス、その他の動物が化粧品のために苦しんでいる現状を終わらせるための取り組みをリードしています。これらの動物たちは声を持っていませんが、Be Cruelty-Freeの誓約に署名し、世界中で化粧品の動物実験を終わらせるために我々のキャンペーンを支援していただくことにより、彼らの代弁者となることができます。

www.hsi.org/bcfjapan

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルとアニマル・アライアンス・オブ・カナダの密な協力により法案提出が実現

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  • HSI/カナダの Rebecca Aldworth、Laureen Harperとスチュワート・オルセン議員。Michael Bernard/HSI カナダ

  • 実現に尽力したチーム。 Michael Bernard/HSI カナダ

モントリオール—618日に、キャロリン・スチュワート・オルセン議員(ニューブランズウィック、保守党)が、カナダにおける化粧品の動物実験の実施と、カナダ国外で新たに動物実験が実施された化粧品やその原料の販売を禁止する法案を提出した。Cruelty-Free Cosmetics Act (クルエルティー・フリー化粧品法)は、ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI)とアニマル・アライアンス・オブ・カナダ(Animal Alliance of Canada)が展開している#BeCrueltyFreeカナダキャンペーンとの集中的な協議により実現したもので、#BeCrueltyFreeは、この歴史的な法案の実現に尽力したスチュワート・オルセン議員への感謝の意を表する。

スチュワート・オルセン議員は次のように述べている。「カナダにとって素晴らしい一日となりました。エシカルな美しさと、化粧品の分野おいて世界の規制と足並みを揃えることに対するカナダ政府の決意を示すことができました。これは重要な第一歩であり、夏を通して、法案の文言をさらに改善させるためにカナダの関係者と協働させていただくことを楽しみにしています。」

HSIの研究・毒性学部門のディレクターのトロイ・サイドルは次のように述べている。「リーダーシップを持って、この進歩的な法案を支持してくださったスチュワート・オルセン議員のおかげで、カナダの動物たちにとって歴史的な一日を迎えることができました。カナダを次の化粧品の動物実験フリーの国にするために、スチュワート・オルセン議員と国内の化粧品業界と共にこの課題に取り組むことを楽しみにしています。」

アニマル・アライアンス・オブ・カナダのディレクターのリズ・ホワイトは次のように述べている。「カナダは、一番最近#BeCrueltyFreeのグローバルな動きに加わった国です。動物たちに立てた誓いを実際のアクションに反映させる必要がありますが、今回のステップはとても心躍る進展です。この法案を現実のものとするために、スチュワート・オルセン議員と業界関係者と共に取り組んでいきたいと思います。」ぜひご支援アクションをお願いいたします。 

化粧品の動物実験に関する状況:

·         カナダの食品医薬品法は、カナダで販売される全ての化粧品及びパーソナルケア製品が、意図された目的で使用された際に安全であることを義務付けているが、安全性を担保する際に動物実験を義務付けていない。

·         化粧品の動物実験はすでに欧州連合(EU)、ノルウェー、イスラエル、インド及びニュージーランドで禁止されており、オーストラリア、ブラジル、韓国、台湾及びアメリカにおいて、各国の#BeCrueltyFreeキャンペーンのチームのリーダーシップのもと同様の規制が協議されている。

·         アニマル・アライアンスとHSIの委託によってThe Strategic Counsel(カナダの市場調査会社)が実施した調査によると、カナダにおいては88%の消費者が、新たな化粧品の試験を実施するために動物に苦痛を与える必要はないと思っており、81%の消費者が、国レベルの化粧品とその原料の動物実験の禁止を支持している。

·         北アメリカでは、既に安全に使用している実績のある何千もの既存の原料と、現存する最先端の動物を用いない試験方法を組み合わせて使っている、500以上の「cruelty-free」(動物実験していない)と認証されている化粧品企業が存在する。

·         政府や業界からの支援により、動物実験の代替法が益々開発され、規制当局により受け入れられている。このような代替法には、眼刺激性試験、皮膚アレルギー試験、皮膚吸収試験、遺伝毒性試験及び日光により生じる「光毒性試験」等のヒト細胞をベースとしたモデルが含まれる。

 

問い合わせ:

·         HSI/カナダ: Christopher Paré—事務所: 514 395-2914/携帯電話: 438 402-0643, cpare@hsi.org

·         アニマル・アライアンス: Liz White—事務所: 416-462-9541 x 23/携帯電話l: 416-809-4371

 

「台湾を東アジア初の化粧品の動物実験を禁止した国に」と #BeCrueltyFreeの呼びかけ

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  • #BeCrueltyFree 台湾と王議員が協力し、化粧品の動物実験を終わらせるために法案を提出した(HSI)

本日、台湾立法院(台湾の国会に相当する機関)において、王育敏議員と台湾動物虐待防止協会(#BeCrueltyFree台湾キャンペーン)の協力により、台湾で化粧品の動物実験を終わらせるための法案が提出された。本日公表された、台湾動物虐待防止協会が委託した新たな意識調査によると、台湾の消費者の69.2%が化粧品の動物実験の禁止を支持しており、76.5%が美しさのために動物を犠牲にしてはならないと考えていることが明らかになった。

欧州連合(EU)、ノルウェー、イスラエル、インド及びニュージーランド等、化粧品の動物実験を禁止する国は、世界中で増加している。 王育敏議員と#BeCrueltyFreeキャンペーンは、台湾が化粧品の動物実験を終わらせる次の国となることを願っている。本日の記者会見において、王育敏議員、台湾動物虐待防止協会と台北市愛兎協会は、東アジアにおいて初の化粧品の動物実験を禁止した国となるべく、早急に法案を可決するように政府に対して呼びかけた。

ウサギの眼に化学物質を点眼するという、眼への損傷を評価するために一般的に実施されている眼刺激性試験等、記者会見においては化粧品の動物実験の裏に潜む醜い秘密についても発信された。この残酷な試験は、ウサギの眼に痛みを伴う腫れを起こし、潰瘍や失明に至ることもある。このような動物を用いた試験においては、ほとんどの場合において鎮痛薬が利用されず、また化学物質に対する反応はヒトと他の動物では大きく異なる場合もあるので、試験結果が必ずしも人間の反応を適切に評価しているとは限らない。

王育敏議員は#BeCrueltyFree 台湾の専門家と協働し、法案を提出した。王育敏議員が提案したのは台湾の化粧品衛生管理条例(Control for Cosmetic Hygiene Act)の改正であり、国際的傾向と足並みをそろえた形で、三年間の猶予期間の後に、代替法の有無にかかわらず、化粧品の動物実験の実施と海外で新たに動物実験された化粧品の販売を禁止するものである。この内容は、欧州連合(EU)の動物実験の実施と動物実験された化粧品の販売禁止と同レベルのものであり、先月の韓国における控え目な法案を上回る。

思いやりのある美しさを実現するために、制約にご署名ください。

王育敏議員は次のように述べている。「世界最大の化粧品市場である欧州連合(EU)は、2009年に化粧品の動物実験の実施を禁止し、2013年には動物実験された化粧品の販売を禁止しました。さらに最近イスラエル、インド及びニュージーランドも同様の規制を実現しています。台湾において化粧品の動物実験に使われている福祉と権利を守るためには、このような禁止を施行しなければなりません。」 

台湾動物虐待防止協会の#BeCrueltyFree台湾キャンペーンのコーディネーターであるJoy Liouは次のように述べている。「#BeCrueltyFree台湾のキャンペーンは、王育敏議員と共にこの法案を提出できることを嬉しく思っています。動物実験は使われている動物に苦痛を与え、信頼性が低く現代科学にそぐわない試験結果を生み出します。時代遅れかつ残酷な動物実験を化粧品の規制から外すことにより、台湾の消費者の保護体制を向上させることができます。化粧品の動物実験を禁止している、もしくは禁止するために取り組んでいる国の数は増加傾向にあり、世界の化粧品市場が2017年には2,650億ドルに達することが予測されていることもあり、法案が可決されれば台湾の国際競争力の向上につながると考えられています。」

「化粧品の動物実験において不必要な苦痛をこれ以上の動物に与えないためにも、この重要な法案を素早く可決するよう、台湾政府に呼びかけています。法案を進めて、台湾を東アジア初のcruelty-freeな国にしましょう!」

台北市愛兎協会の専務理事は次のように強調している。「ウサギはとても社会性のある動物で、他のウサギや動物と一緒の生活が必要です。動物実験により、ウサギたちは苦痛を強いられるのみならず、他のウサギと社会的交流を絶たれ心理的にも負担がかかります。」

台湾動物虐待防止協会とその国際的なパートナーであるヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルは、#BeCrueltyFree 台湾キャンペーンを1年以上に渡り展開してきており、これまでに、法改正を支持するために市民の署名を着実に集め、議員や23社の化粧品企業の支持を得た。

以上

問い合わせ:

台湾: Connie.chiang@spca.org.tw, +886 2 2367-0317

イギリス: whiggins@hsi.org

意識調査は、全国規模でTrend Survey and Research Co. により2015年4月に実施され、サンプル数は1073名、信頼水準は95%であった(誤差の許容範囲+-3%)。

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