実験動物の利用数は2012年から37パーセント増加、1時間で286匹の動物が犠牲になっている計算

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル


韓国の農林水産食品部が先週公表した統計によると、2012年から2015年にかけて、実験動物の利用数が36.7パーセントも増加しており、合計2507,000匹の動物が動物実験に使われた。「K-REACH」の規制に則って何百品目もの既存の化学物質に新たな試験が実施され、動物を用いた吸入試験を実施するための大規模な施設が設立されれば、実験に使われる動物の数はさらに増加し続ける。ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルは、韓国政府に、動物を用いない科学に関する戦略を模索し、このような科学のために予算を確保することを求める。 

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルは、次の声明を発表した。「細胞、コンピューター、ロボットや生物工学を用いた最先端のツールは、動物を基盤としたアプローチの科学的限界の多くをすでに乗り越えている。医薬品の規制当局らは、動物を用いた研究で安全かつ効果的と思われた新規医薬品候補の95パーセントがヒトに投与すると失敗に終わると推測している。主要な疾患の治療法の研究ペースを速め、公衆衛生問題をより徹底して予防するために、韓国政府は、動物実験と同等、またはよりヒトに直接関係しているのみならず、何千倍も迅速でコストが少ない高度なツールや技術に、さらに多く投資する必要がある。」

農林水産食品部のプレスリリースは、「高等」生物(例えば哺乳類など)を使った実験から「下等」生物(例えば魚類など)を用いた研究への移行を動物福祉の改善事項として挙げている。実験方法の精査は歓迎すべきことであるが、HSIは、実験の将来は動物実験の完全代替にあると考えている。世界的に、企業や各国政府当局は、分子や細胞レベルにおける、ヒトに対する毒性の根本原因や「経路」の理解に研究の焦点を定め直している。

ヒトを基盤とした現代的な試験アプローチには、次のような例がある。

·         ドイツのバーチャル肝臓ネットワークVirtual Liver Network)は、ヒトの肝臓の機能を正確に再現できる最先端のマルチ・スケール・モデルを開発するために、70組もの研究グループを結び付けた。

·         ハーバード大学のウィス研究所は、世界をリードする臓器チップ(organs-on-a-chip)の開発拠点の一つであり、10もの異なるヒトの臓器の複雑な機械的及び生物化学的機能を再現し、医薬品のスクリーニングにおいてインビトロ(動物を用いない)方法を提供することに成功した。

·         経済協力開発機構(OECD)は、ヒトにおける化学物質の毒性の根幹についての基本的な生物学的知見を得るために、大規模な研究の取り組みを目的とした加盟国34か国の協力体制を築いている。韓国の貢献は、肝臓や腎臓の毒性に関する専門性を提供している韓国毒性学研究所によりリードされている。


問い合わせ: Borami Seo, bseo@hsi.org, +82. 2. 6376. 1405

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルは、残酷な化粧品の動物実験をブラジルで4番目に禁止した州の決断を歓迎

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル


  • Meredith Lee/The HSUS

州知事が署名したことにより、化粧品の動物実験を禁止する法案が、正式にパラー州の州法8.361となった。化粧品とその原料の動物実験を禁止する法案はJose Scaff代議士により作成され、4月にパラー州議会に承認された。

アマゾンにあるこの州が、サンパウロ、マットグロッソ・ド・スル及びパラナに続き、ブラジルにおいて化粧品の動物実験を禁止した4番目の州となった。ブラジルでは、化粧品の動物実験は、一般消費者及び科学関係者から幅広く非難されている。

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI)#BeCrueltyFree思いやりのある美しさキャンペーンのブラジル担当者であるHelder Constantinoは、次のように述べている。「パラー州はブラジルで二番目に大きな州なので、これは動物にとってとても重要な勝利です。また、これはブラジル議会に対して、ブラジルにおいてこれらの非人道的で時代遅れな実験に終止符を打ちたいという強力な発信であり、国のアクションがない中、州が各自で動物を守る法令を作っている状況です。この課題の解決に向けて前に進む道を示した、立法者、パラー州、そしてこの法令を成立させるために取り組んだすべての人々を賞賛します。」

国レベルにおいては、PLC 70/2014の法案が、化粧品の動物実験の禁止を目指している。

#BeCrueltyFree キャンペーンの連合は、PLC 70/2014の法案が化粧品の動物実験を厳しく禁止し、動物実験された化粧品の販売も禁止されるよう、この法案が議会を通過し、鍵となる改正が盛り込まれるように、働きかけを行ってきた。しかし、法案は20159月に上院の科学技術委員会に提出されて以来可決されていない。ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルは、このような動物実験を世界的に禁止するためにキャンペーンを展開している。

化粧品の動物実験は、欧州連合、インド、ニュージーランド、イスラエル及びノルウェーにおいて禁止されている。禁止に向けた法案は、アメリカ、カナダ、アルゼンチン、台湾、ロシア、オーストラリア、スイス等の国や地域で検討されている。

問い合わせ

HSI日本担当者: 東さちこ、+81-(0)70-5569-7689; sazuma@hsi.org (日本語対応のみ)

                      山﨑佐季子、syamazaki@hsi.org

 

HSUS とHSIは、何千匹もの動物を救う可能性がある決断を歓迎

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル


  • Olga Myrontseva/istock

アメリカの環境保護庁は、省庁が義務付ける農薬の試験において、眼刺激や皮膚刺激などの「急性」毒性や「致死量」に関する試験で、動物の使用を大幅に削減する計画を公表した。この新計画は、より効率的で、予測性が高く、費用対効果が良く、かつ人道的な新たな技術への移行の一環であり、環境保護庁と全米人道協会(The Humane Society of the United States, HSUS)、ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI)や、その他の関係者との何年間にも及ぶ科学的な対話の後公表された。

HSUS及びHSIのレギュラトリー・トキシコロジー、リスク評価及び代替法のディレクターであるキャサリン・ウィレット博士は、次のように述べている。「ラットを用いた致死毒性試験やウサギを用いた眼刺激性試験や皮膚刺激性試験が初めて考え出された1920年代や1940年代から、科学は著しく進歩しています。時代遅れで動物実験の中でも特に残酷なものを置き替えるためにリーダーシップを握って取り組んだ環境保護庁を称賛し、ブラジル、カナダ、インド、日本やその他の主要な市場がアメリカを手本とすることを期待します。」

環境保護庁の公表は、ウサギを使用した眼刺激性試験と皮膚刺激性試験、モルモットまたはマウスを用いた皮膚アレルギー試験、げっ歯類またはウサギを用いた経口投与、吸入及び経皮の致死毒性試験の、6種類の短期の動物実験に関するものである。この試験の「6つパック」と言われているものが、毎年市場に導入される500以上もの新規の農薬の調合と、農薬の新規の「作用物質」(農薬に毒性効果を付与する原料)全ての危険有害性のラべリングのために、環境保護庁により従来義務付けられていた。

環境保護庁の、試験の重複を防止する提案は、何千匹もの動物を苦痛や死から救う可能性が秘められているが、企業が試験免除の機会を十分に活用し、他国の農薬の規制当局がこれを受け入れなければその効果は十分に発揮されない。主要な国際市場が一箇所でもこの重複の多い動物実験の6つパックを要求すれば、動物にとっての収穫は大幅に減ってしまう。

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルは、重複する動物実験の要件の廃止と既存の評価済みの動物実験代替法の受け入れと活用の手続きの最適化を求めて、ブラジル、カナダ、インドや日本等、世界各国の規制当局に対して科学的側面から働きかけを実施している。

問い合わせ 
アメリカ: Raul Arce-Contreras, rcontreras@humanesociety.org, +1 301.721.6440
カナダ: Christopher Pare, cpare@hsi.org, 514 395-2914

 

HSIインドとPeople For Animalsは、何千匹もの動物を救う可能性のある歴史的決断を称賛

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル


  • ラットやその他の動物にとっては良いニュースです. Igor Byrko/iStockphoto

インド保健家族省が本日下した決定により、既に海外において試験が実施されている新規医薬品に対して重複して動物実験を実施することが禁止された。 

この禁止は、別表I における付則Y44.8の後に次の註釈を追加した形で実現した。「文書で記録されている特段の懸念が存在する場合を除き、別表IIIに規定された通りの動物における毒性データが提出され、同様のものが以前に医薬品を承認した国の当局により検討済みの場合、当該の動物における毒性試験をインドで実施する必要はない。」

活動をリードするヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI)インドとPeople for Animalsはこの決定を歓迎している。

HSIインドのコンサルタントであり、People for Animalsの役員であるGauri Maulekhiは、次のように述べている。「保健省のこの動きを歓迎し、賞賛します。この新たな改正は、毎年重複する動物実験の犠牲になる何千匹もの動物を救うだけではなく、インドにおける洗礼された動物実験代替法の新たな時代の幕開けを感じさせるものです。医薬品技術諮問委員会が提言した通り、すでに評価(バリデート)された代替法の使用が奨励されることを保証するために、引き続き省庁に働きかけていく予定です。」

この動きのきっかけは、女性子ども開発大臣のManeka Sanjay Gandhi氏が当該省庁の大臣にこの習慣について文書で問い合わせたことであった。医薬品技術諮問委員会の前に課題の検討を行う新規医薬品調査委員会( Investigational New Drug Committee)は、医薬品がGLP(Good Laboratory Practice)の条件のもと、そしてインドの規制要件に沿った形で他国において実施された場合、それ以上の毒性試験を求めないと述べている。さらに、両委員会は、国際的に認められている動物を用いない代替法が存在する箇所において、その活用を奨励している。

2011年より、インドは経済協力開発機構(OECD)のデータ相互受理(Mutual Acceptance of Data, MAD)の全面的な支援者である。このため、インドのGLPの研究所において収集されたデータはOECD加盟国全てにおいて受け入れられなければならず、また逆の場合も同様である。OECDは、データの相互受理の順守は、不必要な試験の重複を回避し、15000万ユーロ以上のコストの削減と多数の動物の命を救うことにつながるとしている。 

 

問い合わせ

 Navamita Mukherjee, email: nmukherjee@hsi.org, mobile: 91-9985472760

 

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルは、スイス政府のCruelty-Free(動物実験していない)になるためのコミットメントを歓迎します

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル


  • Meredith Lee/The HSUS

スイス政府が、新たな動物実験が実施された原料を含む化粧品の販売を禁止することを公表した。これは、緑の党所属の議員Maya Grafが提出した動議を受けての公表であり、可決されれば、スイスは、2012年にヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルが世界各国に展開する#BeCrueltyFree思いやりのある美しさキャンペーンを開始してから、動物実験された消費者製品の取引を廃止するために法的手段を取った国としては35番目になる。

#BeCrueltyFreeキャンペーンのディレクターのクレア・マンスフィールドは次の通り述べている。「残酷な化粧品の販売を廃止することにより、cruelty-free(動物実験していない)になることに取り組む国は増えており、スイスがこのような国々の仲間入りをしたことは喜ばしいニュースだと思います。世界各国において、残酷な化粧品の動物実験を未来永劫、終わらせるための機運が盛り上がっている証拠の一例だと思います。スイスの議会において、この重要な課題を取り上げてくださったGraf議員と、それを行動に移したスイス政府を称賛します。」

世界最大の美容製品の市場である欧州連合(EU)や、ノルウェー、イスラエル、インド、ニュージーランド、トルコ、韓国及びブラジルのいくつかの州では、化粧品とその原料の動物実験を完全に、もしくは部分的に禁止している。#BeCrueltyFreeキャンペーンのリーダーシップのもと、同様の法案がアメリカ、カナダ、ブラジル、台湾、オーストラリア、アルゼンチンやその他の地域で検討されている。

問い合わせ 
イギリス: Wendy Higgins, whiggins@hsi.org, +44(0)7989 972 423
アメリカ: Raul Arce-Contreras, +1 301.721.6440, rcontreras@humanesociety.org

 

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  • istock


化粧品の動物実験を世界的に禁止することは強く支持されており、動物実験を、動物を使用しない代替法に置き換えるための断固たる活動が展開されてきたことは周知の事実だが、この度、これに関する科学的根拠が明らかになった。ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(HSI)HSI Be Cruelty-Free思いやりのある美しさキャンペーンのパートナーらが、ブラジル、カナダや韓国等世界の鍵となる化粧品市場において一連の意識調査を実施し、The Humane Society of the United Statesがアメリカで調査を外注した。また、日本と台湾においては、LUSH Fresh Handmade Cosmeticsや国内の動物保護団体とパートナーシップを結び調査を実施した。

 

以下、調査結果を示す。


カナダ 8割が国レベルの化粧品の動物実験禁止を支持

·         88%が、動物実験は「動物に苦痛を与え、既存の安全な原料がある中、化粧品の安全性試験のためだけに動物に苦痛を与える必要はない」と考えている。

·         81 %が、化粧品とその原料の動物実験を国レベルで禁止することを支持している。

·         欧州連合が化粧品の動物実験を禁止したことを伝えると、カナダにおける禁止に反対またはどちらとも言えないと回答した回答者の1/3が考えを変え、カナダでの禁止を支持するようになった。


韓国 7割が国レベルの化粧品の動物実験禁止を支持

·         65.6%が、動物実験は「動物に苦痛を与え、既存の安全な原料がある中、化粧品の安全性試験のためだけに動物に苦痛を与える必要はない」と考えている。

·         70.2%が、化粧品とその原料の動物実験を国レベルで禁止することを支持している。

·         欧州連合とイスラエルが化粧品の動物実験を禁止したことを伝えると、韓国における禁止に反対またはどちらとも言えないと回答した回答者の5割近くが考えを変え、韓国での禁止を支持するようになった。


ブラジル 2/3が国レベルの化粧品の動物実験禁止を支持

·         ブラジル国民の2/3が、化粧品とその原料の動物実験を国レベルで禁止することを支持している。

·         61%が、動物実験は「動物に苦痛を与え、既存の安全な原料がある中、化粧品の安全性試験のためだけに動物に苦痛を与える必要はない」と考えている。

·         2/3が、「持続性、環境保護及び自然派またはオーガニックな原料の使用にコミットしていると宣言している化粧品会社は、製品に動物実験をするべきではない」と考えている。


日本(出典: ッシュジャパン)

·         9割近くの回答者が、「動物実験が必要なほど危険な成分を化粧品に使わないでほしい」と回答している。

·         5割以上の回答者が化粧品の動物実験に関心があると回答している。

·         65% 、「動物実験をしているメーカーは、使用した動物の種類や数などを情報公開すべきだ」と回答している。


アメリカ (出典HSUS)

·         68%が、化粧品の安全性試験のために動物が使われていることを知っていた。

·         3/4の有権者が、化粧品の安全性の試験に、動物の代わりに動物を使わない代替法が使われた方が安心する、または同じくらい安心感があると回答している。

·         年齢、学歴、人種にかかわらず、女性の過半数が、化粧品の動物実験を違法化するべきであると思っている。


台湾

·         76.5%が、美しさのために動物が苦しんではいけないと思っている。

·         69.2%が、化粧品の動物実験を禁止する法律を支持している。

·

上記の世論調査は、2012年から2014年まで実施しました。

#BeCrueltyFree キャンペーンは第一歩として法律を歓迎するも、化粧品の動物実験の実施と動物実験されたものの取引の完全な禁止を求める

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル


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  • Adam Gault/Getty Images

動物との共生を考える連絡会とヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI)が動物の愛護及び管理に関する法律(以下、動物愛護法)の次回の改正に向けて、日本の実験施設における動物の境遇を改善するために新たに協力体制を築くことを表明した。動物との共生を考える連絡会とHSIの共同の改正案は、動物実験施設の規制の強化、動物福祉の向上や、最先端の科学を用いた動物を用いない代替法の活用と開発の促進による実験動物の代替や削減等、日本の実験動物に関する規制が国際的に最も厳しい基準に足並みを揃えられるような改正点を含む予定である。

動物との共生を考える連絡会とHSIは、動物愛護法の改正に向けて、2016年に始まる法の見直し期間中に所轄省庁や国会議員に対して共同で働きかけを行う。

動物との共生を考える連絡会の青木貢一代表は次のように述べている。「動物との共生を考える連絡会は、【動物の愛護及び管理に関する法律】の次回法改正に向け、グローバルな動物愛護団体であるHSIと協働で、動愛法第41条における「実験動物」に関する条文のより良い改正に向けて、国会議員と、この法律を管轄する環境省に対し、積極的かつ有効な働きかけを行います。同時に、法律の制定及び改正は、その時々の国民意識の反映でもあることから、一般の方々へのPRも含め、日本において実験施設や農場等で使われる動物を含めた、あらゆる動物種に対する、愛護精神や福祉意識の向上を目指します。」

HSIの研究・毒性学部門のディレクターのトロイ・サイドルは次のように述べている。「動物との共生を考える連絡会とパートナーシップを結べることを嬉しく思います。日本における動物福祉の向上に取り組んできた動物との共生を考える連絡会の経験とHSIの科学的及び国際的活動における専門性が、動物愛護法のより良い改正を促し、日本の実験施設における動物の保護の基準の改善につながればと期待しています。」

以上

問い合わせ:

HSI (日本): 山﨑佐季子, syamazaki@hsi.org (日本語・英語対応可)

              東さちこ, 070-5584-9546, sazuma@hsi.org (日本語対応のみ)

HSI (イギリス): Wendy Higgins, +44 (0)7989 972 423, whiggins@hsi.org (英語対応のみ)

動物との共生を考える連絡会: 佐々木靖幸, (042)-623-8797, info@dokyoren.com

 

注釈

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI) 及びそのパートナー団体は、世界最大級の動物保護団体です。HSI 20年近くにわたり、科学、アドボカシ―、教育及び実践プログラムを通して全ての動物の保護に取り組んできました。「世界中の動物に畏敬の念を示し、動物虐待に立ち向かう」ウェブサイト― hsi.org/endanimaltesting (英文のみ)

 動物との共生を考える連絡会は、「人と動物が共に幸せに暮らせる社会づくりを目指す」という趣旨に賛同した団体・法人・個人の連合体であり、「動物の愛護および管理に関する法律」を国民に周知し、同時にこの法律をより良いものに改正するために、管轄官庁や行政自治体、国会議員などへのロビー活動などを行う連合体です。ウェブサイト   http://www.dokyoren.com/

 

化学物質の安全性試験を現代化するために: 将来に向けてヒト生物学を基盤としたアプローチに投資

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル


  • Shutterstock

今週、ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルと韓国動物実験代替法学会が主催したフォーラムにおいて、政府、業界及び科学関係者が、韓国における化学物質の試験を改善させると同時に動物実験を代替もしくは削減できるような、最先端の試験方法について協議した。Sangjeong Sim議員及びJungrim Moon議員により支持され、韓国の大手化粧品企業であるアモーレ・パシフィックや、韓国毒性学研究所等からの報告を伴った今回のフォーラムでは、韓国の化学物質の規制やK-REACHを最新の状態にすることや、安全性試験における21世紀のアプローチへの投資の必要性について協議された。 

21世紀毒性学とは、生体工学技術により作られたチップ上の臓器、自動ロボットによる高スループットのヒトの細胞や遺伝子の試験や、次世代のコンピューターを用いたモデル等、細胞や分子レベルで人体において化学物質がどのように作用するかに関する研究を可能にし、世界中で安全性試験に変革をもたらしている、革新的な、ヒトへの影響を直接評価することができるツールである。研究の質を高めると同時に、動物実験を完全に代替できる可能性も持つこれらの方法は、アメリカやヨーロッパで先駆けて開発されており、従来の動物実験と比較してわずかな時間と費用で結果を出すことができるものである。
 
2007
年に、全米科学アカデミーが、従来の動物実験から離れ、安全性評価及びリスク評価に関する新たなアプローチの模索を呼び掛けた、「21世紀の毒性学: ビジョンと戦略」という報告書を公表した。この報告書を受けて、これらの現代技術を活用するための研究のイニシアチブが世界各国で次々と開始された。

しかし、韓国においては、代替法に関する投資はまだまとまりがなく、化粧品の動物実験を制限する法案の国会承認に先立ち、主に化粧品業界内のものに集中している。今年の一月に施行されたK-REACHが動物実験を最小限に抑えることを求めているにも関わらず、国際的に評価され受け入れられている代替法がある箇所においても時代遅れの動物実験を求める要件が規定されており、特に韓国の化学工業において代替法の活用を促進する必要がある。

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルの研究・毒性学部門のディレクターのトロイ・サイドルは次のように述べている。「韓国の行政の様々な部処庁の長官が集まり、代替法のポテンシャルや韓国における研究基盤が遅れを取らないようにするためにはどのような策を講じるべきかについて協議したのは今回が初めてです。現代科学は、我々が化学物質や製品の試験を実施する方法を変革しうる可能性を持つ新たなツールを作り出しており、韓国の産業界においてこれらの技術を促進させるためには、政府の支援は必須となります。」

アモーレ・パシフィック、ケムオン及び韓国動物実験代替法学会からの専門家により、化粧品業界や化学工業における代替法の概要について講演があり、韓国毒性学研究所からは、経済開発協力機構(OECD)、アメリカや欧州連合(EU)により、レギュラトリー・トキシコロジーにおいて鍵となると認められている、有害転帰経路(AOP)の開発の重要性について講演が予定されている。サイドルは、OECDEUREACH規則に対して動物実験の代替法について専門家として助言をしており、安全性科学と保健医療関連の研究を発展させるための知見を提供した。

韓国動物実験代替法学会のYongjin Chun教授は次のように述べている。「研究のための予算確保や政治的支援を得るため、このフォーラムが代替法の開発の重要性を認識する機会となってくれることを願っています。」

問い合わせ:  Borami Seo, bseo@hsi.org

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル


動物実験が法令で要件となっている場合もある製品試験と異なり、生命科学の基礎研究、病理学やヒトの疾患の治療の研究については動物の使用を義務付ける法令はない。このような研究における動物実験は、生命科学や医学の草分けの時代から引き継がれたものである。しかし、動物に害を与える研究の代替として様々な他のアプローチが真価を発揮し始めている。このようなアプローチには下記が含まれている。

疫学調査: 人間の集団の比較研究により、科学者や医者らは、予防的措置をとることができるようにヒトの疾患や障害の根本的原因を発見することができる。疫学は比較に基づいた科学である。例えば、調査対象となっている要因に対する暴露の度合いが異なる集団の疾患の発生率を比較することができる。喫煙とがん、コレステロールと心疾患、高脂肪の食事と一般的ながん、そして化学物質への暴露と出生異常などの関連性は、疫学により明らかになった。疫学調査は、さらにエイズやその他ほぼすべての感染性疾患の伝染のメカニズムも明らかにしており、このような調査により、これらの疾患をどのように予防できるか示すことができる。

臨床研究: 疾患や障害の原因について、患者を治療する過程において明らかになったことも多々ある。高度なスキャン技術(MRIPETCT等)を用いた患者を対象とした調査において、アルツハイマー病、統合失調症、癲癇や自閉症の患者の脳における異常が特定されている。

インビトロ研究: 細胞や組織培養を使った研究(インビトロ研究)は、抗がん剤、抗エイズ薬やその他の医薬品のスクリーニングに使われている。また、ワクチン、抗生物質や治療用たんぱく質を含む医薬製剤の中には、今では製造や試験をインビトロで行うことが望ましいとされているものもある。エイズウィルスをヒト血清において隔離することに成功しており、インビトロの方法により、ウィルスがヒトの細胞に及ぼす影響が明らかになりつつある。現在、国際的なヒト組織バンクにより、糖尿病、がん、嚢胞性線維症、筋ジストロフィー、緑内障やその他50種類以上の異なるヒト組織が研究のために提供されている。インビトロの遺伝子研究では、アルツハイマー病、筋ジストロフィー、統合失調症やその他の遺伝性疾患に関連している遺伝子マーカー、遺伝子やたんぱく質を特定するに至っている。

ヒトの臨床試験、疫学研究やインビトロ研究は医学の進歩においては必要不可欠である。(動物実験を用いている研究者も、動物実験の妥当性を確認もしくは否定するために必要であるとしている。)しかし、人間の参加者を募った研究を倫理的に実施するためには動物実験とは異なる対応が必要となる。動物実験では、人工的に疾患を誘発させるが、臨床研究の場合、すでに疾患を持っている人間や亡くなった人間を対象とする。動物実験では、適宜操作して必要に応じて殺処分できる「研究対象」が望ましいが、臨床研究では、研究者は患者や調査の参加者に害を加えてはならない。動物実験では、人工的に作り出された「動物モデル」が完全にヒトの状態を再現できることはないというジレンマが残るが、臨床研究の場合、結果は人間に直接的に関係があるものとなる。しかし、残念ながら、現時点では保健関連の慈善事業や政府の研究資金提供機関は、人間を調査する研究方法よりも動物を用いた研究により多くの資金を供給している。

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(HSI)ヨーロッパは、より倫理的で信頼性のある研究方法の開発を促進すべく、世界をリードするような動物を用いない研究方法の研究拠点の設立のためのキャンペーンの最前線で取り組みを展開している。20085月、HSITrust for Humane Research (医学研究において代替法の開発促進に取り組む財団)Hadwen 博士と世界的に有名な霊長類学者のJane Goodall 博士を招いて欧州議会でイベントを共催した。HSIは、「動物実験のないヨーロッパの科学に向けて」という共同執筆した報告書と15万人のEUの市民の署名を提出した。

 

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