woottigon/istock 東京・ソウル(2018年04月02日)— ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI)は、除草剤等の農薬におけるビーグル犬を用いた1年間の毒性試験の要件を廃止するという日本の農林水産省の決断を歓迎する。この試験では、32頭ものイヌが、1年間毎日、農薬を混ぜた食餌を与えられる。その後、イヌは処分され、内臓の状態が観察される。これは、何千匹もの動物が使われる一連の農薬の毒性試験の一部に過ぎない。 農林水産省の決断は、2年間に及んだ食品安全委員会委託の研究に基づいたもので、研究においては、イヌを用いた1年間の試験が、人間における安全な暴露レベルを定める際に価値のある情報をほぼ貢献しておらず、したがってほとんどのケースにおいて試験を実施する必要がないことが示された。この研究結果は、2007年にアメリカにおいて始まり、そしてその後インド、欧州連合、ブラジル及びカナダと続いた規制要件の改正につながった過去に実施された類似の分析研究と一致した結果であった。HSIは、これらの規制改正のための交渉の多くの最前線で、グローバルなネットワークや各国で運営されている事務局及びプログラムを駆使して取り組みを展開させていた。 HSI副会長兼研究毒性学部門の担当のトロイ・サイドルは次の通り述べている。 「農薬のデータ要件から、この不必要かつ非人道的な試験を廃止するという日本の決断を称えると同時に、説得力のある科学的根拠が既に存在するにもかかわらず、国によっては行動を起こすまでに20年近くもかかっているということが残念でなりません。動物実験の廃止に向けた科学的な根拠が確立され次第、すべての国が即座に廃止に向けて動くようになるよう、農薬のデータ要件やリスク評価のアプローチについて、今よりももっと質の高くかつスピーディーな国際調和が急務であると考えます。各国の動きが遅いという理由のみで、犬たちが20年もの間、不必要に苦しみ続けるということは、決して許されるべきではありません。」 韓国、台湾やアルゼンチンは、引き続き1年間のイヌの試験を農薬の要件としている。この状況は、国際的な規制調和や、動物実験の要件を廃止する取り組みにおける協力体制の強化の必要性を浮き彫りにしている。HSIは、動物を用いないアプローチの開発、情報の共有、データの相互受理、そして重複する研究の回避に関するグローバルな取り組みに、すべての国の完全な参加を奨励するために活動している。 1年間のイヌの試験について: ほとんどの国の規制要件において、 農薬の「有効成分」(農薬の効果をもたらす毒物)一件を登録するために、最大10,000匹のげっ歯類、魚類、鳥類、ウサギ及びイヌが、何十通りもの化学物質の毒性試験において用いられる。これらの試験の多くは重複しており、2種類以上の動物や異なる暴露の経路(経口、吸入、経皮等)における反復となっており、科学的な価値の厳しい再評価を求める声が挙がっている。 委託研究においては、286件の農薬の評価が分析され、95%近くにおいて、人間にとっての安全な暴露量を定める際に、1年間のイヌの試験が重要な知見を貢献することがなかったことが示されている。この結論は、日本において登録された45件の農薬における1年間のイヌの試験のデータを分析した、独立した研究者らが公表した先行研究と一致している。(Critical Reviews in Toxicology, volume 44/issue 10,...