韓国の農林水産食品部が先週公表した統計によると、2012年から2015年にかけて、実験動物の利用数が36.7パーセントも増加しており、合計250万7,000匹の動物が動物実験に使われた。「K-REACH」の規制に則って何百品目もの既存の化学物質に新たな試験が実施され、動物を用いた吸入試験を実施するための大規模な施設が設立されれば、実験に使われる動物の数はさらに増加し続ける。ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルは、韓国政府に、動物を用いない科学に関する戦略を模索し、このような科学のために予算を確保することを求める。
ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルは、次の声明を発表した。「細胞、コンピューター、ロボットや生物工学を用いた最先端のツールは、動物を基盤としたアプローチの科学的限界の多くをすでに乗り越えている。医薬品の規制当局らは、動物を用いた研究で安全かつ効果的と思われた新規医薬品候補の95パーセントがヒトに投与すると失敗に終わると推測している。主要な疾患の治療法の研究ペースを速め、公衆衛生問題をより徹底して予防するために、韓国政府は、動物実験と同等、またはよりヒトに直接関係しているのみならず、何千倍も迅速でコストが少ない高度なツールや技術に、さらに多く投資する必要がある。」
農林水産食品部のプレスリリースは、「高等」生物(例えば哺乳類など)を使った実験から「下等」生物(例えば魚類など)を用いた研究への移行を動物福祉の改善事項として挙げている。実験方法の精査は歓迎すべきことであるが、HSIは、実験の将来は動物実験の完全代替にあると考えている。世界的に、企業や各国政府当局は、分子や細胞レベルにおける、ヒトに対する毒性の根本原因や「経路」の理解に研究の焦点を定め直している。
ヒトを基盤とした現代的な試験アプローチには、次のような例がある。
· ドイツのバーチャル肝臓ネットワーク(Virtual Liver Network)は、ヒトの肝臓の機能を正確に再現できる最先端のマルチ・スケール・モデルを開発するために、70組もの研究グループを結び付けた。
· ハーバード大学のウィス研究所は、世界をリードする臓器チップ(organs-on-a-chip)の開発拠点の一つであり、10もの異なるヒトの臓器の複雑な機械的及び生物化学的機能を再現し、医薬品のスクリーニングにおいてインビトロ(動物を用いない)方法を提供することに成功した。
· 経済協力開発機構(OECD)は、ヒトにおける化学物質の毒性の根幹についての基本的な生物学的知見を得るために、大規模な研究の取り組みを目的とした加盟国34か国の協力体制を築いている。韓国の貢献は、肝臓や腎臓の毒性に関する専門性を提供している韓国毒性学研究所によりリードされている。
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